屋根裏生活×やねうららいふ

機械・電子系ガジェット・本をこよなく愛し、いろなんことをやってみたがる人の、気まま記録。

必要だから存るんだよ。


 Yahoo!知恵袋で、「自分にも回答が出来る物がないかな?」と探していたら

 ”電柱も信号も看板もありすぎる。景観を損なうし、地中化しろ”


 みたいな意見があったんですよ。



 ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、天堂は電気系の仕事をしております。
 そんな中で、電柱とも信号とも、ある種看板とも、お付き合いがあります。


 みなさんがどれくらいご存知かわかりませんが…。
 例えば、電気とか電話関係を地中化すると、現在のような地上に設置する(一般的に、「架空」と呼びます)よりも、おおよそ30倍の設備費用がかかります。
 そのお金はどこから出るか?といえば、電気代・電話代・税金など、みなさんのお金です。

 それから、家などと一緒で、電気などの設備も、維持するにはお金が掛かります。
 当然といっていいのか、架空よりも、地中の方がお金が掛かります。
 そして、意外と知られていないのが、「地中の設備をいじるには時間がかかる」ことです。
 物理的な問題もありますし、行政の書類審査の問題もあります。
 家一軒、事務所ひとつ構えるにしても、電気は必需品なワケでありまして。
 それなのに、案外と「申し込みを忘れていた」というケースがあるんですね。
 まぁ、これは施主さんじゃなくて、建築屋さんや電気屋さんが悪いことが殆どなんですが。(それを商売にしている以上、ちゃんと責任があると思うんですよ)
 しかし、地面を掘るというのは、なかなか面倒な物です。
 舗装剥がして、歩道なら0.6m、車道なら1.2m以上の深さに埋めなくてはなりません。
 しかも、それは1-2mの距離ではありません。
 大抵は20-30m必要です。
 そんな距離を、しょっちゅう掘り返していたらですよ?
 一年中、道路工事をしまくることになります。
 そして、舗装を剥がす=再度舗装が必要、というわけで、更に期間が延びます。

 その上、地中化に必要なのは、電気のケーブルだけではありません。
 大抵は「変圧器」「開閉器」と呼ばれる機械が一緒くたになって着いてきます。
 (余談ですが、この中で一番高価な物は、約3000千万円です。車を運転する際は、ぶつけないように気をつけましょう/笑)

 これらの機器は、6-12年サイクルで、点検が必要です。
 点検には当然費用が必要ですし、それに大概が「停電」が必要です。
 この電気時代に、大がかりな停電をさせてくれるところはあまりありません。
 電力各社が苦慮しているところです。

 もうひとつ。
 ”地中化は場所を取らない”
 と言われていますが、それは少々誤解があります。
 確かに、一部を見れば邪魔者がないようですが…。
 地中化している区域の殆どが、
 ”歩道が広い” 必要があります。
 なぜかというと、
 前述した機器を設置するのに、ある程度のスペースが必要だからです。
 電柱なんかメじゃなくくらいに大きなシロモノですよ(笑)。
 一度、地中化してある区域をご覧になってみて下さい。
 大抵は電力会社のマークが入った、ごつい四角い箱が設置してあるはずです。
 
 なので、地中化の絶対条件として、
 ●滅多に需要が伸びない(需要が充足しきっている)区域
 ●歩道に規定以上の幅がある
 というものが挙げられます。

 滅多に〜というのは、最初の方に書いたように、家が建ったり壊したりをするようなことがしよっちゅうあると、その数だけ地面を掘り返さなくてはならないので、という意味です。
 だから、基本的に街中が多いです。
 もしくは、観光地で、行政の厳しい許可がなければ建物の新増築が行われない場所、です。

 

 それから、みなさんがお気づきかわかりませんが…。
 電柱には、実に色々な設備が乗っています。
 電気を供給する電線・変圧器などは当然ですが、その機器類を監視する保安線。
 それ以外にも、電話線・信号のケーブル・ケーブルテレビ・有線放送・看板・信号etcです。
 なぜそんなに乗っているのか?
 答えは簡単です。
 ●設備を安くする=お客さまの負担を減らす
 ●設備(この場合は電柱)の数を減らす
 です。
 みんな邪魔に思っているかも知れませんが、これでも各社頑張っているのですよ(笑)。
 
 それから案外知られていないのが、電柱と電柱の距離(間隔)ですね。
 おおよそ30−40mが多いかな?
 ただし、電話会社が建てる電柱は、もっと間隔が狭いことが多いです。
 なぜかというと、
 ”電話会社の建てる電柱は、基本的に高さが低い”
 のです。
 そして、どんな電線にも、「決められた高さ(4.5m)」以上を遵守する義務があります。
 なので、電柱が低くて、電柱と電柱の間隔が長いと、電線の途中が、この「規定以下」になってしまう可能性があるのです。
 だから、仕方なく、電話会社は電柱の本数を増やして、高さを稼いでいるわけです。
 (元々高くすればいいじゃないかという説もありますが/笑)
 

 それと、
 ”あっちにもこっちにも信号がありすぎ”
 という意見が述べられていましたが…。
 実際問題、信号機に割かれている予算はそれほど多くないです。
 (これは警察の方に聞いたから本当)
 先に書いたとおり、信号も電柱に便乗していることが多いです。
 信号用の電柱を建てれば、それだけ単価が上がりますからね。
 それに、必要に応じて、資材を転用したりもしています。
 必要が無くなった信号機を、新たに信号が必要になった場所へ移設したりしています。
 そうやって物資有効活用をしているんですね。


 看板については、これは営利目的の物が殆どなのでなにも言えませんが…。
 それ以外の、電柱や信号については、本当に必要最低限のものしかないんです。
 タイトル通り、「必要だから存るんだよ」 です。

 個人的に言わせていただければ、自動車税一般財源に転用するのはやめていただきたいですね。
 一般財源に転用すること自体を反対しているわけではなくて、「まだ、お金を掛けるべき道路もしくはそれに類する設備」が沢山残っているからです。
 天堂が住んでいるところが田舎だからか…。
 整備されていない&信号がなくて危険な道路が山ほどあります。
 そういうものを無視して、「もう充足しているから」というのは、甚だ遺憾ですね。
 一回くらい、視察に来い!と言いたくなりますよ(笑)。
 
 
 それとですね。
 世の中、「ギブ&テイク」というか、「義務と権利」で成り立っているんだよ、と声を大にして言いたいですね。
 皆さんのところに電気や電話、インターネット回線などのライフラインがいっているのは、その大元の設備からみなさんのところへ至るまでの沢山の人の好意を頂いているからです。
 道路も同じですね。
 自分の家の前だけが全てではないでしょう?
 昔は誰かの土地だったところが、様々な経緯を経て、今、公共の設備としてみんなが等しく使うことが出来る。
 電柱なんかも一緒なんですよ。
 よく「なんで自分の家にだけこんなものがあるんだ」と文句を言われる方がいらっしゃいますが…。
 実際は、その方だけが迷惑を被っているわけではないのです。
 そこに至るまで、本当に沢山の方々にご尽力いただいて、やっと電気なり電話なりを供給しているのですよ。
 
 最近の方は「権利」を主張することばかり覚えて、「義務」を怠る方が多いですね。
 給食費問題などがその最たる物ですが…。
 
 なんだか殺伐とした世の中ですが、「貰う」ばかりではなく、「与える」余裕も持っていただきたいものだと思います。





 …ついつい自分の分野なので、長く語ってしまいました(笑)。
 すみません。


 くだんのYahoo!知恵袋にも投稿しようと思ったんですが、元々悪意を持っている方に諭したところで取り合っていただけるとは思えませんし。
 (寧ろ、変に攻撃されそうで怖いし)
 なので、長々と自分のBlogで語ってしまいました。


 お付き合い下さいました方々、ありがとうございました。